常磐線のあらまし
 常磐線は、上野と仙台を結び、千葉・茨城・福島の3県を通過すると一般には考えられているらしい。「国鉄監修・時刻表」(日本交通公社)でも、常磐線(上野―水戸-仙台)と表示されている。
 けれども、日本国有鉄道の定義に従えば、常磐線は東北線に属する支線区のひとつであり、日暮里で分岐して岩沼で合体する。ほかに3つの貨物支線がある。
 再び「時刻表」に目をむけてみると、上野―水戸―仙台間を運航する列車はおろか、区間列車に至るまで、日暮里岩沼を始発。執着として運航する旅客列車は見当たらない。日暮里の場合には、この駅に停車する特急・急行すら見当たらず、岩沼の場合にも特急列車は総て通過し、急行列車の場合でも、3往復が停車(53.6.20訂補時刻表)するだけである。
 「時刻表」には、上野―水戸―仙台と表示されながらも、上野と仙台をそれぞれ始発・終着とする列車は、特急1往復(下りひたち5号、上りひたち3号があるだけで、ほかに下りで普通列車が2本、上りは急行列車1本(そうま1号)という変則ダイヤをとってきた。
 常磐線の旅客列車は、いまでは上野以南に進出はしない。だが下り方向では、仙台以北の東北本線に直通する優等列車が特急8往復、急行4往復(臨時・季節列車を除く)もあり、特急は総て上野と青森間に設定されている9往復のうち7往復が常磐線往復なのである。
 このように見てくると、常磐線は線内相互間発着の旅客に便宜を図るよりは、首都と仙台の東奥羽各地との連絡線、さらには青函航路を経由する北海道各地との連絡線としても機能する存在といえるだろう。
 だが、営業キロのうえでは、日暮里と岩沼の間では、東北本線を通る方が14.7キロ短くなり、常磐線を経由しても、運賃計算は東北本線経由のキロ数を適応する特例が設けられてきた。
 特異な性格をもつ常磐線の内容は、その建設目的にかかわる歴史的な要因をうちに秘めているのである。
中川浩二・鉄道ピクトリアル10月号 1978 常磐線開通80周年

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