出征兵士を見送る堀川一正町長の姿が原の町駅頭にいつもあった。
昭和10年代の、ほとんどの人気のあいだ、日本は泥沼の長い戦争の中にあった。
ここ原の町駅からも、中国大陸や南方の諸島の戦場へと、長い旅程をたどっておびただしい数の男たちが駆り出された。
生きて帰った者があり、白木の箱に「英霊」と印刷された紙きれ一枚になって帰宅した。
それらさまざまな帰還を迎えに立つ町長の姿もまた、町民の瞼に焼き付いた。
歓呼や、悲嘆や、複雑な感情がそこで渦巻いていただろう。様々な涙が、そこで滂沱と間がされたことだろう。