30年前の311前史 足踏み状態の原町火力建設計画 1986.

 ”福島県のチベット”といわれる相馬・双葉地方。その相双地方を狙い撃ちするかのように、東京電力福島第一原発、同第二原発、同広野火力が立地した。これらはすでに運転を開始しているが、同時期に計画が発表された東北電力原町町火力、同浪江小高原発は、いまだ着工のめどさえ立っていない。ボラボヤしているうちに電力の需要が低迷してきたことによるものだが、電力会社の開発計画に一喜一憂する地方自治体のありようを何と表現したらよいのかわからない。以下は、原町火発の現地レポートである。

宙に浮いてしまった発電所計画
「常磐沖にむかって原子炉が十基ならんでいる。ここが日本最大の原発銀座福島県双葉郡である。上野から電車では常磐線、国道なら六号線で二百キロあまり、東北新幹線も高速道路も阿武隈山地の裏を通過するので、高速時代に取り残された所だ。岩手県のはるか遠い盛岡まで上野から二時間四十五分で行くのに、双葉郡まで特急で三時間半もかかる」
 六十年度福島県文学賞準賞を受賞した「原発地帯」は、このような書き出しで始まる。
小説「原発地帯」は、浪江町をモデルにした波上町を舞台として、さまざまな人物の類型が入り乱れて動く。それは東北の一寒村に、降って湧いたような原発誘致が決定してから、利権と欲とが渦巻き、修羅の人間模様を描きながら、やがて電力需要の低下を理由に、あっさりと掌を返したように見捨てられるという悲喜劇である。
 浪江町では十八年たっても、いまだに原発用地買収が完了していない。
 一時の景気は、冷え切ってしまっている。
 そんなドタバタ劇が、北隣の原町市でも、火力発電所建設に絡んで起きそうな気配だ。今や、東北のチベット地帯になってしまった浜通り北部の相双地方。新幹線、高速道路からもはずれ、政治的にも無風状態の三区。
 その中心に位置する原町市の市民待望の火発建設の現在をレポートする。

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