ヨッシーランドを案内する

雨の中で、19日原町区渋佐海岸のヨッシーランドという老人介護施設の津波廃墟を訪問し、川崎グループ一向に見てもらった。
津波報道の直後に、テレビの第一報で扱われた死亡事故の現場。
36人の死者と1名の行方不明を出した。
正面玄関に近づいてゆくと、きわめて大きく、しかも立派な構造の建物であったことがわかるが、爆撃で吹き飛ばされたようなぼろぼろ状態。玄関の上から、電線がぶらさがり、すべての壁が、風の通り抜けて、中も見通せる。大きな窓枠が破壊され、中は片付けられしまって空っぽ。
まさに廃墟だ。海に面した部屋を見た。泥水が天井まで充満し、すさまじい並みの跡が、抽象画の天井画のようにペイントされていた。
正面通路はがらんとして、汚れた机が中央に置いてあった。ペットボトルの飲み物や、線香が載せてある。かたわらには多くの花束がバケツに刺されて、整然とはいいがたいほど。
奥へと続く通路の壁に、私の身長と同じ高さの泥水の水位がはっきりと塗られて、跳ね上がったしぶきの飛沫がそのまま描かれている。こうして波が勢いよく浸入し、引いていったのだろう。
個室を一室一室覗いてみた。壁にまだ、名前の札が残されていた。
この建物の中身は片付けられたが、すべての人が見ておくべきだと思った。壁の泥水の跡だけでも、津波の爪あとが、明確にわかる。
新聞記事や、テレビ画像で、何度も見た施設なのだが、初めてこうして現地を踏むと、まったくの別物だ。「モノ」が、訪問者に直接語りかけるのだ。
この体験は、この場に立つとわかる。
そう思っただけで、胸がつまり、責任感であふれてくる。
写真で記録するだけでは、この状況は無理なのだ。この空間に立つこと。廃墟じしんが語りかける声を聞くことでしか、伝わらないだろう。

津波と原発事故
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