「浪江原発」墓地移転で動き 1993.3
 浪江町小高町にまたがって建設が計画されている浪江原発は、膠着状態のまま二十年という時間が過ぎ去ったが、ここへきて浪江町では、墓地造成という新たな手法で地権者に対するアプローチを模索中だ。
 東北電力が双葉郡浪江町に計画している浪江小高原発で、土地の取りまとめをしている浪江町と県土地開発公社が二月二日から十六日まで六回にわたって、予定土地になる共同墓地を移転させるための新しい墓地造成の説明会を行った。説明会には、反対派住民も出席。全くの膠着状態からいくぶんなりとも浪江原発計画に、動きが出てきた。ただし「墓地の造成には絶対に応じない」とする棚倉原発反対同盟の桝倉委員長は反発している。
 浪江町棚倉と北棚倉の両地区の約百三十戸が共同で管理している弥平迫墓地で、広さ五千六百七十二平方メートル、約七百三十基がある。このほか原発予定地区には東原墓地と大原墓地があり、それぞれ七百六十六平方メートル、四百二十八平方メートルの共同墓地。
 町は、昭和五十九年に両地区に墓地対策委員会を発足させたのだが、反対同盟は参加せず、さらに二年後の六十一年に原発予定地の外に一万二千平方メートルの新墓地用地を確保。移転作業を進めようとしたが、難航したまま膠着状態だった。
 町や東北電力によると、原発用地内の地権者の方から「墓を新しくしたいがその後、新墓地移転構想はどうなったのか」と問い合わせが相次いだため、急きょ新墓地移転計画が浮上した、という。
 電源開発も、日本全体の景気と電力需要の浮沈という時代の推移を背景に地権者の世代の動きをにらんで持久戦の様相を呈していたが、ここへきて動きが出てきた。
 計画の土地約百五十ヘクタールのうち約二十ヘクタールの土地について地権者の同意が得られず、土地交渉が難航したまま膠着状態だった浪江原発、地権者の高齢化が今後の焦点になってきた。
 町と東北電力では、二月中に行われた説明会をもとに、地元で話し合ってもらい、四月までに地区の意見を聞く。
 町の案としては、新墓地を約百三十区画造成し、移転に応じる人から順次移し、移転に反対の人については、その後の話し合いということにする。
 浪江町は四月七日に、町会議員選挙が行われる。
 ともかく相双地区の相馬市、原町市、浪江町という核の部分で、当初の開発が「更新」の時期を迎えて、すこしずつ動きを見せている。

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