第二章 神のユーモア=ヨナの物語
様式的にみれば、これは、一つの短編小説のように読むことができる。じっさい、旧約学者ゲルハルト・ラートによれば、この「軽妙で微笑をさそう物語」は、聖書ではほかにちょっと見当たらないものだという。(「イスラエルにおける神の働き」1974)。ひとによっては、「世界文学の中で、もっとも美しい短編小説」(R・A・シュレーダー)と評する声もあるほどである。

「ニネベ」は、じっさい、紀元前五世紀の敬虔なユダヤ人にとって悪の代名詞のような存在だった。その飽くことのない征服欲と支配欲とを結びつけた「神なき都」のシンボルだった。じじつ、イスラエル自身、アッシリア帝国による残虐な支配政策を経験した。アッシリアは、世界史上、おそらくはじめて大規模な被制服民族の集団移住=強制連行を行った国である。その首都ニネベは、現代化風にいえば、強制収容所と集団殺戮の評判とが結びついていた町だった。「ニネベはソドムとアウシュビッツとを混在した町である」(E・ランゲ)ということもできよう。