きょうのノート 矢内原忠雄全集より抜書き
第10巻 p35 第四講 楽園の創造
創世記には創造伝説が二通り掲げられてある。
その一は1の1ー2aであって、之はP(祭司典)の記録であり、他は2の4b-24であって、之はJ(エホバ典)の史料による。
(3)pにありては創造の順序の最期に人が創造(つく)られ、而も同時に男女が創造られたに反し、Jにありては最初に人が創造られ、それより植物、動物、女の順に創造られたことになて居る。
(4)Pにありては創造の結尾は神の安息であるに反し、Jにありては人の結婚である。
p237 三 女性的な罪と男性的な罪
創世記第三章に記されるエバの罪が特に女性の性格の弱点を描写して居るとすれば、第四章に記されるカインの罪は特に男性の短所を示すものと言へよう。
筆者は、女の責任転嫁と男の怒りを挙げている。
p243 ヘブル書に「アベルはカインよりも勝れる犠牲を神にささげ、之によりて正しと証せられたり」(11-4)とある。「勝れる犠牲」はささげた物に附着する区別ではなく、ささげた心の態度が「信仰に由った」点に見るべきである。アベルは己を無にし、(「アベル」といふ語の意味は、「無」もしくは「息」といふことである)、神を絶対に義とする信仰に由って、その供物をささげた。たとひ神が彼の供物をかへりみ給はなくても、彼はそれによって神を恨み、神を不公平呼ばはりして不平をもつことなく、すべて神の為し給ふところを義とする信仰をもって、神にささげものをした。之に反してカインは己の力によりたのみ(「カイン」といふ語の意味は、「得たり」といふこと、或は「鍛冶」の意ともいふ)、意気揚々として、押しつけがましく神の前に己の供物をさし出したのであらう。これは人のたかぶりとして、神の最もよろこび給はない態度であった。この意味でアベルは信仰を代表し、カインは律法を代表するものと見てよいであらう。